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ここがポイント

政府は2016年4月、抗菌薬全体の使用量を2020年までに対2013年比で33%減少させることを盛り込んだ「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(AP)」を決定しました。経口セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド系の抗菌薬は50%減、静注の抗菌薬は20%減など、具体的な数値目標が入っています。

薬剤耐性感染症(ARI)の治療薬について、新たに優先審査制度や薬事戦略相談を創設するなどして開発を支援する方針も記載しました。

 

2020年に抗菌薬の使用を3分の2へ

政府は2016年4月、「AMR対策AP」を決定しました。計画期間は2016年~2020年度で、普及啓発・教育、動向調査・監視、感染予防・管理、抗微生物剤の適正使用、研究開発・創薬、国際協力の6分野で具体的な取り組みを設けています。

特徴的なのは、成果指標として多くの数値目標を入れたことです。使用量の多い経口のセファロスポリン系(「メイアクト」など)、フルオロキノロン系(「クラビット」など)、マクロライド系(「クラリス」など)の抗菌薬の使用量は、2020年までに2013年比で半減させる方針を打ち出しました。静注の抗菌薬は20%減らします。これにより、2020年の人口1,000人あたりの1日抗菌薬使用量を、2013年水準の3分の2に減らすことを明記しています。

主な微生物の薬剤耐性率を減少させることも目標に掲げました。例えば2014年時点の耐性率が51%に達する「黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率」を2020年に20%以下にすることや、肺炎球菌のペニシリン耐性率を2020年に15%以下にすることなどがあります。

一方、ARI治療薬については、開発支援策を盛り込みました。具体策として、医薬品医療機器総合機構に新たな優先審査制度や薬事戦略相談を創設することなどを入れました。

そのほか、市場性の低いAMR感染症に対する新薬の開発を促進するため「他国の制度の状況も踏まえつつ、新たな制度の実施を含め、開発インセンティブの在り方を検討」することも書き込まれています。

 

背景には「開発トレンドの変化」も

AP策定の目的は、抗菌薬の不適切な使用などによるAMRの拡大を抑えることと、ARI治療薬の開発支援です。抗菌薬は、かつて製薬企業の開発品目で花形だった時代がありますが、先進国での主な死因が感染症から非感染症疾患へと変化したことで、創薬のトレンドも変わり、新たな抗菌薬の開発は減少しました。

かたや、薬剤耐性菌の脅威は増し、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌やバンコマイシン耐性腸球菌などの「薬剤耐性グラム陽性球菌」や、多剤耐性緑膿菌や多剤耐性アシネトバクターの「薬剤耐性グラム陰性桿菌」による医療関連感染症は拡大し、大きな問題となっています。

世界保健機関(WHO)は2015年5月に開いた総会で、薬剤耐性に関する国際行動計画を採択、日本もそれを受け、APを策定しました。既存の抗菌薬の適正使用を推進すると同時に、新規抗菌薬の開発を積極的に支援する姿勢を政府として明確にしたといえます。

抗菌薬は、2016年度薬価制度改革で「基礎的医薬品」に選ばれ、重要性にあらためて光が当たりました。APの策定により、今後の開発動向が一層注目されることになりそうです。


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